イッタラはどこへ向かうのか?

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こんにちは。tetsukoです。

フィンランドの「イッタラ」が大幅にリニューアルしました。

2月初旬に入ってきたこのニュースは、わたしにとってはとても衝撃的でした。

はじめには読んだのはELLEの記事でしたが、今後のイッタラがどうなるのかいまいち状況がつかめず、新クリエイティブ・ディエレクターのヤンニ・ヴェプサライネン氏(Janni Vepsäläinen)の名前で調べてみました。

Finnish Design ShopdesignboomDezeenの記事を読み、ユーザーとして感じたことを記したいと思います。(全てGoogle翻訳で読んだので細かいニュアンスが違っているかもしれませんが…)

1.これまでのiittala

デザイン性と機能

一人暮らしをはじめて以来、いつの間にか器が好きになり、作家さんのつくる陶器や、波佐見焼等の磁器も愛用しています。

そんな中、仕事が忙しくなるにつれ、レンジよし! オーブンよし! 冷凍よし 食洗機よし!と、機能が抜群でその上で美しいデザインの北欧食器は食卓の主役となりました。

引っ越して、結婚して、出産して・・・そのたびに同じシリーズを増やせることにありがたみを感じたものです

また、自社製品はもちろん、他のブランドはもちろん和食器にも馴染むプレーンなデザインは使いやすく、同じように愛用されている方も多いのではないでしょうか

「i」マークの完成度

イッタラ公式サイトより

イッタラのロゴはいままでも変更されてきましたが、赤い「i」マークは1974年から2024年2月の50年間使用されてきました

数年前にフィンランド郊外の町で中古のアアルトベースを購入したのですが、一見主張の強い赤いマークが白いガラスに美しく映え、このマークも含めて完成されたデザインだなと思ったものです。

2.これからのIITTALA

新ロゴは新しいようで新しくない?

イッタラ公式サイトより

さて、ニュースで最もインパクトがあったのはロゴマークの変更ではないでしょうか。

インタビューでも「イッタラを変えていく」という意気込みを感じましたが、実際のロゴはなんだか少し古めかしいような、意外なデザインだなと感じました

新たにアイノ・アアルトシリーズに敬意を表したフォント「Aino」が作成されましたが、象徴的なイエローカラーは「窯で溶融するガラスの鮮やかな色」の他、バウハウスの伝統と原色への敬意を表しているとのことでした。

https://www.bauhaus.ac/bauhaus100/

並べると本当にバウハウスのイメージですね!

そのうち見慣れるとは思いますがなかなか衝撃的な変更です。

とはいえ、地球環境に配慮し今後は商品へ貼り付けるシールを廃止するとのことで、先ほど「i」マークを称賛したもののこれ自体は企業の方向性として時代に即していると思います

製品に貼られるシールが黄色になると違和感も大きいですしね。

まるでファッションブランドのよう?

dezeenより

イッタラの公式Instagramでも投稿されている新しいビジュアルですが、いままでと大分イメージが異なります。

H&Mホームかな?というのが率直な感想でした。

商品の写真にファッショナブルなモデルが登場しており、ビジュアルを一新し、若い世代にもアピールする狙いがあるとのこと

お洒落な雰囲気になりましたが、こうした「なんだかおしゃれな感じ」がイッタラらしいのかと言われると疑問です。

タイムレスデザインはどうした?

次に、新体制でデザインされたはじめてのコレクション、2024年3月に発売される「イッタラ プレイ」について。

dezeenより

「イッタラ プレイ」を見た最初の印象は、「HAY」っぽいなということでした。

HAYより

HAYはデンマークのインテリアプロダクトブランドです!

酷似しているわけでないですが、丸みを帯びたポップなデザインや淡いカラーリング、どこかイッタラではなく他ブランドの印象を受けました

近年で丸みを帯びたデザインと言えば、個人的には2019年のジャスパー・モリソンによる「ラーミ」かなと思います。

しかしこちらは「プレイ」とは方向性が異なり、滑らかな印象を受けるものの、他のシリーズとの整合性がとれた美しいデザインです。

3.フィンランド国内の反応

荒れる本国のSNS(イッタラアカウント)

さて、新ビジュアルの発信に伴い、SNSの過去の投稿を削除したことでも話題の本件。

イッタラの日本公式アカウントのコメントにも悲しみを訴えるものが多くありましたが、本国ではどのように捉えられているのか覗いてみました

ざっと目を通したところ、多くの人がこのリブランディングを失敗だと評しているようです

フィスカース社への批判の他、ヤンニ・ヴェプサライネン氏に対する辛辣なコメントも多くありました。

ヤンニ・ヴェプサライネン氏のSNS

なお、ヤンニ・ヴェプサライネン氏のアカウントにも数件厳しいコメントがついていますがイッタラ公式ほどではありません。

むしろイッタラの新しいビジュアルは彼女の過去の投稿に馴染んでおり、イッタラは完全に彼女の軸に乗ったのだと実感させられます

janni.vepsalainen氏のInstagramより

お洒落ですけれどね。

4.ヤンニ・ヴェプサライネン氏の試みとは

イッタラのクラシックなデザインは行き詰まっていた?

インタビュー記事を読んでいて気になったワードがいくつかありました。

  • ファッションとデザインの間をもっと自由に行き来できるようにすべきだ(新しい視点も生まれ
  • ファッションとデザインの間をもっと自由に行き来できるようにすべきだ(新しい視点も生まれ
  • いつもミューズや特定の人物を思い浮かべてデザインしている(おそらく今回はそれが若い世代)
  • イッタラにはスカンジナビアのクラシックなデザインを多用されており、新作とのバランスを取ることが重要
  • クラシックなデザインを現代に通用させるにはどうすればいいのか
  • (ブランドに)ちょっとした斬新さをもたらすにはどうすればよいか
  • イッタラに「アバンギャルドで少し意外性のあるもの」の要素を与えたい

これまでのデザインを一新する必要があるかのような、意気込みを感じます。

ファッショナブルなビジュアルや「イッタラ プレイ」のデザインからも感じることですが、若い世代へのアピールがいまのイッタラの軸となっているようです

新しい食卓のあり方を考える

その他、特に興味を引いたのが下記のインタビュー内容です。

I wanted to look into the home rituals we have. We rarely sit in front of the table anymore but more often in front of a TV or on the floor. We eat everything with one hand, most likely from a big bowl. How we spend time in our homes is changing, especially among the younger audience who usually live in smaller spaces. It was super important to me that the collection involves multifunctional objects that serve as little home treasures. I also wanted to create a more lifestyle-focused collection with new categories, like candles.

私は、私たちが持っている家庭の儀式について調べてみたかったのです。テーブルの前に座ることはめったになくなりましたが、テレビの前や床に座ることが多くなりました。私たちは片手で、おそらく大きなボウルから何でも食べます。私たちが家で過ごす時間は、特に狭いスペースに住んでいる若い世代の間で変化しています。私にとって非常に重要だったのは、このコレクションには、小さな家の宝物となる多機能なオブジェが含まれていることです。また、キャンドルのような新しいカテゴリーで、よりライフスタイルに焦点を当てたコレクションを作りたかったのです。

designboom.comより

食卓に食器を並べて食べるというイメージは若い世代にはフィットしないのでしょうか

日本のユーザーは6ピースや12ピースで揃える方は稀かなと思いますが、セットで揃えないし、堅苦しい使い方をしないという点では、ヤンニ・ヴェプサライネン氏の意見もわかる気はしますが…。

わたしはティーマシリアルにキャラメルポップコーンを入れてヨギボーで食べています

(こういうことなんでしょうか…?笑)

半年ごとにコレクションを発表

驚くべきことに、今後は半年ごとに新しいライフスタイルコレクションを発表するとのことです。

しかしながら、コレクションの発表頻度については本当にこれがイッタラにとって有益な手法なのか大いに疑問です。

一つを長く大切に使うものであって消費されるものではない、それがイッタラの誇るタイムレスデザインではないのでしょうか

While the six-monthly production cycle has often been criticised when it comes to fashion brands, Vepsäläinen believes that it has validity for a brand like Iittala, which has traditionally had very long production lead times.

ファッションブランドでは、6か月の生産サイクルが批判されることが多いが、Vepsäläinen氏は、伝統的に生産リードタイムが非常に長いIittalaのようなブランドにとっては、このサイクルが有効であると信じています

dezeen.comより

5.リブランディングの果てに思うこと

タイムレスなデザインとして愛される一方、若い世代の支持を獲得できていないというのは、ブランドとして致命的なことだったのかもしれません。

イッタラがはじめてクリエイティブ・ディレクターを起用したのも、会社としての伸び悩みがあったのだと思います

そのため、新しいものをすべて否定したくもないのですが、新しいイッタラにどこか「他ブランドの雰囲気を感じてしまう」という、複雑な心境です。

以上、イッタラ製品をファッションアイテムではなく、デザインと機能の宿る便利な道具として愛してきた一利用者としての率直な感想でした。

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